あくまでもロックとして響くボブのフォーク時代の傑作
63年のこの作品以来、ボブ・ディランはずっと重要なロック・アーティストであり続けたし、作品を発表するごとにボブのロックとしての重要性は常に増してきた。それは、ボブの作品がロックンロールの意味を解き明かすという性格を常にもっていたからだ。もちろん、ボブ自身はそういう意図を持って作品と取り組んでいたわけではないのだろうが、ボブの音楽活動はいつもロックの根幹と関わるもので、結果としてボブの作品はいつもロックそのものを対象化した内容もになってきた。エルヴィス・プレスリーの「ミステリー・トレイン」がなぜあれほど衝撃的なことだったのか、それをエルヴィスの楽曲からはまったく離れて、その時々のボブの具体的な文脈で語ることが、ボブの楽曲とパフォーマンスの数々の意味をなしているものなのだ。言ってみれば、ボブはそのキャリアを通してロックとは何かということを、自らの作品を通して解釈し続けてきたといってもいい。本作は63年のボブのセカンドで、フォーク期のボブを代表する傑作。この作品1枚にしてボブは当時のフォーク・シーンの旗手にまで祭り上げられることになったが、それはこの作品がそれだけ衝撃的なものだったからだ。カヴァー中心だったファーストから転じて、全曲オリジナルで時代と直に向き合った歌詞、優しくも激しいボブのメロディーとボーカルはそのまま時代の声となった。そして、この作品がそれだけの力を持ちえたのは、この時期のボブがフォークというスタイルを貫きながらも、あくまでもロックンロールのエッジを形にしようとしていたからなのだ。事実、企画盤「バイオグラフ」収録の「ゴチャマゼの混乱」のほか、ボブは既にこの時期にバンド構成のロックンロール曲をいくつもレコーディングしていたのだ。基本的にはボブはロックンロールやブルースとの出会いとその時自分が受けた衝撃を、さまざまに形に変えて表現してきたのだ。この作品はフォークという形で、ボブのそんな他者体験を最も生々しく伝える作品なのだ。
風に吹かれて – Blowin’ in the Wind – 2:48
北国の少女 – Girl from the North Country – 3:22
戦争の親玉 – Masters of War – 4:34
ダウン・ザ・ハイウェイ – Down the Highway – 3:27
ボブ・ディランのブルース – Bob Dylan’s Blues – 2:23
はげしい雨が降る – A Hard Rain’s a-Gonna Fall – 6:55
くよくよするなよ – Don’t Think Twice, It’s All Right – 3:40
Side 2
ボブ・ディランの夢 – Bob Dylan’s Dream – 5:03
オックスフォード・タウン – Oxford Town – 1:50
第3次世界大戦を語るブルース – Talking World War III Blues – 6:28
コリーナ、コリーナ – Corrina, Corrina – 2:44
トラディショナル
ワン・モア・チャンス – Honey, Just Allow Me One More Chance – 2:01
作詞・作曲: ディラン、ヘンリー・トマス(Henry Thomas)
アイ・シャル・ビー・フリー – I Shall Be Free – 4:49